物理モデルと観測データとの融合による地震波動場推定法
長尾 大道(東京大学地震研究所)
大阪大学 数理・データ科学セミナー データ科学セミナーシリーズ 第38回
物理モデルと観測データとの融合による地震波動場推定法
長尾 大道(東京大学地震研究所)
地震発生直後に、建物や橋梁等の構造物の被害を数値シミュレーションによって即時に推定する「応急評価」の技術開発が行われている。応急評価のためには、各構造物の直下における地震動を初期条件として与える必要があるが、そのためには、構造物の空間密度よりも圧倒的に疎な地震観測点で得られた観測データから、地震波動の空間分布を推定するよりほかない。しかしながら、観測データのみからの推定では、十分に満足な波動場を得ることはできない。
本研究では、地下構造モデルや波動方程式といった地震波伝播に関連する物理モデルを同時に考慮することにより、高周波領域まで推定可能な地震波動場推定法を提案する。具体的には、地下が水平成層構造をなしていると仮定し、地震波速度や層厚、さらには震源に関するパラメータの事後分布を、レプリカ交換モンテカルロ法によって推定する。
提案手法を、擬似観測データに基づく数値実験によって性能評価を行ったところ、仮定した真のパラメータ値と整合的な波動場を再構成可能であることを確認した。また本手法を、2014年9月16日の茨城県南部地震の際に、首都圏地震観測網MeSO-netで得られた地震観測データに適用したところ、観測データのみからは再構成が不可能であった周期5秒以上の長周期帯において、地震学で従来から用いられているvariance reduction (VR)やcombined goodness-of-fit (CGOF)と呼ばれる指数を十分に改善する波動場を再現することに成功した。
講師: | 長尾 大道(東京大学地震研究所) |
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テーマ: | 大阪大学 数理・データ科学セミナー データ科学セミナーシリーズ 第38回 |
日時: | 2018年11月20日(火) 14:40-16:20 |
場所: | 大阪大学豊中キャンパス基礎工学研究科 J棟 J617号室 |
参加費: | 無料 |
参加方法: | |
アクセス: | 会場までのアクセスは下記URLをご参照ください。 http://www.es.osaka-u.ac.jp/ja/access.html |
お問い合せ: | 本ウェブサイトの「お問い合せ」のページをご参照ください。 |